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2026.08.10

院長ブログ

インフルエンザワクチンで脳梗塞が防げる!?

〜糖尿病をお持ちの方は、この秋ぜひ知っておいてください〜

みなさん、こんにちは。

大阪北摂地域 箕面船場にある、まにわクリニック院長の馬庭です。

秋が深まってくると、当院でもインフルエンザ予防接種を行っています。

多くの方が接種されるのですが、中には

「今年もインフルエンザの予防接種、受けたほうがいいですか?」

というご質問を頂くことがあります。

インフルエンザワクチンというと「熱が出るのを防ぐもの」「重症化を防ぐもの」というイメージがある一方、「ワクチンの副反応が心配」というお考えもあると思います。

最近、インフルエンザワクチンを接種した方は脳梗塞になりにくい、それも糖尿病をお持ちの高齢の方でとくにそうだ、という研究結果が報告されました。

今回はこの研究をご紹介しながら、なぜ感染症の予防が血管を守ることにつながるのかを、循環器専門医の立場から解説します。

目次

  1. 糖尿病があると、なぜ脳梗塞が起きやすいのか
  2. インフルエンザ感染が脳梗塞の「引き金」になる
  3. 最新研究:ワクチン接種で脳梗塞リスクが15%低下
  4. とくに効果が大きかったのはどんな方?
  5. 私の考え 〜この秋、あなたにできる5つのこと〜

1.糖尿病があると、なぜ脳梗塞が起きやすいのか

そもそも、糖尿病の方や食後血糖値スパイクがある方は、脳や心臓、血管のトラブルが増えることが知られています。

慢性的に血糖が高い状態が続くと、余分なブドウ糖が血管のタンパク質と結びつき(糖化)、血管の内側を覆う内皮細胞を少しずつ傷つけていきます。イメージとしては血管が焦げてしまうのです。

こういった反応はもともと料理の世界ではよく知られていました。糖化反応が起こると(メイラード反応と呼びます)香ばしい香りがつき、味が美味しくなるのです。

でも、体内でこのような糖化反応が起こると、カラダが焦げつき、様々な障害を引き起こします。

傷ついた血管はしなやかさを失い、慢性的な炎症の場となります。そこにコレステロールが入り込んでプラーク(脂の塊)を形成し、動脈硬化が進んでいきます。

実際、糖尿病をお持ちの方の脳梗塞のリスクは、そうでない方と比べておよそ2〜3倍と報告されています。しかも、糖尿病の方の脳梗塞は再発しやすく、後遺症も残りやすい傾向があります。

だからこそ、血糖の数値を下げることだけでなく、「血管そのものを守る」という視点がとても大切になります。

2.インフルエンザ感染が脳梗塞の「引き金」になる

意外に思われるかもしれませんが、インフルエンザは「のどと肺の病気」だけでは終わりません。

ウイルスに感染すると、からだを守るためにサイトカインと呼ばれる炎症物質が大量に放出され、全身が強い炎症状態になります。

コロナ禍を思い出していただきたいのですが、一番流行していた時期に多くの方が亡くなった原因はこの炎症が暴走し、肺や血管をボロボロにしてしまったからです。

この炎症は、血管の壁にたまっていたプラークを不安定にして破れやすくします。同時に血小板(血を固める細胞)が活性化し、血液が固まりやすい状態になります。

その結果、インフルエンザに感染した直後の1〜2週間は、心筋梗塞や脳梗塞が起こりやすくなることが以前から知られていました。

なので、感染症を防ぐことは、そのまま血管の事故を防ぐことでもあるのです。

3.最新研究:ワクチン接種で脳梗塞リスクが15%低下

では、ワクチンを接種することで本当に脳梗塞が減るのでしょうか。

この疑問に答える研究が、2026年に中国から報告されました(Hum Vaccin Immunother 2026;22:2697144)。

対象となったのは、地域の医療情報基盤に登録された60歳以上で糖尿病をお持ちの13万1,045名です。2022年1月1日の時点で脳梗塞の既往がない方を、同年7月31日まで追跡しています。

結果として、ワクチン接種者では7か月以内の虚血性脳卒中の発症リスクが15%低下していました(調整後sHR 0.85、95%信頼区間 0.76〜0.95)。

4.とくに効果が大きかったのはどんな方?

この研究のおもしろいところは、「誰でより効果が大きかったか」まで踏み込んで解析している点です。

  • 流行したウイルスとワクチンの型がよく一致したシーズン … sHR 0.74(0.61〜0.89)/約26%低下
  • 冠動脈疾患(狭心症・心筋梗塞)を合併している方 … sHR 0.46(0.25〜0.86)/約54%低下

つまり、もともと血管のリスクが高い方ほど、ワクチンによる恩恵が大きい可能性があるということです。

さらに研究デザインとして評価したいのが、

「もともとインフルエンザワクチンを打つ人は、健康意識が高いから脳梗塞のリスクが低かっただけじゃないの?」

という疑念にも対策しているところです。

この疑念に対応するために肺炎球菌ワクチンの接種を行っている方に対しても同様の評価を行っています。

つまり、肺炎球菌ワクチンの接種の有無によって脳梗塞の発症率が上昇するかどうかを解析しています。

もし、健康意識が高いから脳梗塞の発症率が低下したのなら、肺炎球菌ワクチンを打つような意識の高い人も同様に脳梗塞の発症リスクが下がるはずです。

結果としては前述にお示しした図のように、肺炎球菌ワクチンの接種では脳梗塞の発症率は変わりませんでした。

つまり、インフルエンザワクチンによるインフルエンザ発症や重症化のリスクを低下させた結果、脳梗塞の発症頻度を低下させる可能性が示されたということです。

5.私の考え 〜この秋、あなたにできる5つのこと〜

この結果を踏まえて、どのような対策をすれば良いでしょうか。

ワクチンは、感染症そのものを防ぐだけでなく、血管を守るための「低コストな一手」になり得ます。とくに糖尿病や心臓の病気をお持ちの方には、この秋ぜひご検討いただきたいと思っています。

そのうえで、当院がふだんからお伝えしている生活習慣・栄養面の対策も合わせてご紹介します。

  • 10〜11月にインフルエンザワクチンを接種する(抗体ができるまで約2週間かかります)
  • 血糖・血圧・脂質を「数字で」把握し、管理する(HbA1c、家庭血圧、LDLコレステロール)
  • ビタミンD・亜鉛で免疫の土台を整える(日本人の多くが不足しています)
  • オメガ3脂肪酸・マグネシウムで血管の炎症をしずめる
  • 睡眠は7時間、運動は週150分を目安に確保する

とくにビタミンDは、免疫細胞のはたらきを調整し、呼吸器感染症そのものを起こしにくくすることが複数の研究で示されています。ワクチンと栄養は、どちらか一方ではなく「両輪」で考えていただくのがよいと思います。

いかがでしたでしょうか?

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

まにわクリニックでは、血液検査やさまざまなバイオロジカル検査を用いてあなたの状態をチェックし、生活習慣のアドバイス、栄養サポート、サプリメントのご提案などを行っております。

インフルエンザワクチンの接種も承っております。血糖や血管のことが気になる方は、一度ご相談ください。

参考文献

1) Yang T, Ying X, Yang H, et al. Influenza vaccination associates with reduced risk of incident ischemic stroke among older adults with diabetes: A population-based retrospective cohort study. Hum Vaccin Immunother. 2026;22(1):2697144. doi:10.1080/21645515.2026.2697144

2) Kwong JC, Schwartz KL, Campitelli MA, et al. Acute Myocardial Infarction after Laboratory-Confirmed Influenza Infection. N Engl J Med. 2018;378(4):345-353.

3) Emerging Risk Factors Collaboration. Diabetes mellitus, fasting blood glucose concentration, and risk of vascular disease: a collaborative meta-analysis of 102 prospective studies. Lancet. 2010;375(9733):2215-2222.

4) Boehme AK, Esenwa C, Elkind MSV. Stroke Risk Factors, Genetics, and Prevention. Circ Res. 2017;120(3):472-495.

5) Jolliffe DA, Camargo CA Jr, Sluyter JD, et al. Vitamin D supplementation to prevent acute respiratory infections: a systematic review and meta-analysis of aggregate data from randomised controlled trials. Lancet Diabetes Endocrinol. 2021;9(5):276-292.

院長 馬庭直樹

記事執筆者

まにわクリニック
院長 馬庭直樹(まにわなおき)

  • ・日本内科学会認定内科医
  • ・日本内科学会総合内科専門医
  • ・循環器専門医
  • ・心臓リハビリテーション指導士
  • ・日本心血管インターベンション認定医
  • ・脈管専門医
  • ・下肢静脈瘤に対する血管内治療実施基準による実施医
  • ・弾性ストッキングコンダクター
  • ・日本抗加齢医学会専門医
  • ・点滴療法研究会 高濃度ビタミンC点滴療法認定医
  • ・日本キレーション協会 キレーション認定医
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