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院長ブログ
2026.10.30
院長ブログ
ビタミンK2+Dで血管の石灰化は止められるのか? 〜高度な石灰化のある方を対象にした最新の臨床試験から〜

みなさん、こんにちは。大阪北摂地域、箕面船場にある、まにわクリニック院長の馬庭です。
「いつ心筋梗塞が起こるのか」
これを予測することは困難ですが、リスクを評価する方法の1つとして「CT検査で心臓の血管(冠動脈)に石灰化があるかどうか」
が検証され、リスク因子の1つとして挙げられています。
では、冠動脈に石灰化を指摘された場合、どうしたらよいのでしょうか?
もう打つ手はないのか・・・
この疑問に答える臨床試験の結果が、米国心臓協会の学術誌『Circulation』に発表されました。デンマークで行われたDANCODE試験です。
目次
1.血管が「石灰化」するしくみとビタミンK2
2.DANCODE試験が示した数字
3.この結果は誰に当てはまるのか
4.私の考えと、今日からできること
1. 血管が「石灰化」するしくみとビタミンK2

動脈硬化が進むと、血管の壁にたまったプラーク(コレステロールなどのかたまり)にカルシウムが沈着します。これが「石灰化」です。心臓のCT検査では、石灰化の量を「冠動脈石灰化スコア」という数字で表します。0なら石灰化なし、400以上は高度な石灰化とされます。
体には、石灰化を防ぐしくみも備わっています。その代表が「MGP(マトリックスGlaたんぱく)」です。MGPは、血管の壁でカルシウムの結晶ができるのを抑える見張り役です。ただし、MGPはビタミンKの助けで「スイッチが入った状態」にならないと働けません。
台所でたとえると、やかんの湯あかです。水に含まれるカルシウムは、放っておくとやかんの内側にこびりつきます。MGPは湯あか防止剤のようなもので、ビタミンKはその防止剤を動かす電池にあたります。
ビタミンKには、緑の野菜に多いK1と、納豆などの発酵食品に多いK2があります。とくにK2(メナキノン7)は体内に長くとどまるため、血管への作用が期待されてきました。
一方、ビタミンDはカルシウムの代謝にかかわり、MGPの量を増やすとも考えられています。
つまり、石灰化の進行を抑制するために、ビタミンKやDの効能に期待が持たれていました。
2. DANCODE試験が示した数字

DANCODE試験は、石灰化スコアが400以上の398人(年齢の中央値71歳)を2つのグループに分けた、二重盲検ランダム化比較試験です。一方はビタミンK2を720μgとビタミンDを25μg(1000IU)、もう一方は見た目が同じ偽薬を、毎日24か月飲み続けました[1]。
2年間で石灰化スコアは、ビタミン群で平均196AU、偽薬群で平均248AU増えました。差は52AU(95%信頼区間24〜79AU)で、統計学的に意味のある差です。
ビタミンK+Dを服用することで、約21%緩やかになる計算です。ただし絶対的な差でみると、参加者のもともとのスコア(中央値903AU)の約6%にあたる量です。高度な石灰化という「区分」が変わるほどの差ではありません。
一部の参加者(143人)では、造影CTでプラークの中身も調べました。プラーク全体の大きさの増え方は両群で同程度で、柔らかいプラーク(非石灰化プラーク)の量にも差はありませんでした。小さくなったのは、石灰化した部分だけです。
なお、この試験では心筋梗塞や死亡といった出来事は調べていません。
3. この結果は誰に当てはまるのか

効果は男女でも、石灰化スコアが400〜999の方と1000以上の方でも、同じような傾向でした。高度な石灰化がある方なら、程度にかかわらず進み方を少し遅くできる可能性があります。
一方で、当てはめるときに気をつけたい点があります。
まず、対象は中央値903AUという、かなり進んだ方々です。石灰化がない方や軽い方が予防のために飲んで効果があるかは、この試験からは分かりません。
さらに、K2とDを同時に飲んでいるため、どちらが効いたのか区別できません。ビタミンDだけを約2万6,000人が飲んだ米国の大規模試験では、心筋梗塞・脳卒中・心血管死は396人 対 409人で、偽薬と差がありませんでした[2]。
最後に、デンマークは日照が少なく、納豆を食べる習慣もない国です。もともとビタミンK・Dが足りない人ほど、補ったときの変化は出やすくなります。
4. 私の考え

日本人はビタミンDが不足しがちです。東京で健康診断を受けた5,518人の調査では、98%が充足の目安(30ng/mL)に届いていませんでした[3]。屋内で過ごす時間の長さ、日傘や日焼け止めの習慣、魚を食べる量の減少が影響していると考えられます。一方、ビタミンK2は納豆に非常に多く含まれます。関西は、東日本に比べて納豆を食べる習慣が少ない地域です。
当院でも、健診や他院のCTで「石灰化がある」と言われ、不安を抱えて相談に来られる方が少なくありません。
また、冠動脈に石灰化を認め、詳しく検査した結果、治療必要な病気が見つかった症例も多数経験しています。
私自身の考えとして、まず重要なのは動脈硬化を起こす要因を改善させることです。悪玉(LDL)コレステロール・血圧・血糖の管理と禁煙です。そのうえで、ビタミンDやKが足りていない方が食事やサプリで補うことは、血管を守るためや、骨の健康も含めて理にかなっていると考えています。
今日からできること
・石灰化を指摘されたら、まずコレステロール・血圧・血糖の数値を確認する
・処方されているスタチンや、血液をサラサラにする薬は自己判断でやめない
・ワルファリンを飲んでいる方は、ビタミンK2サプリや納豆を自己判断で始めない
・納豆、緑の野菜、魚、きのこを日々の食事に取り入れる
・日焼けしない程度に、手のひらや腕に日光を浴びる時間をつくる
・サプリを考えるときは、飲んでいる薬を医師に伝えてから相談する
サプリと医薬品は別ものです
病院で処方される「メナテトレノン」(ビタミンK2製剤)は骨粗しょう症の薬で、サプリのK2(メナキノン7)とは種類も量も異なります。ビタミンDも、処方薬の「活性型ビタミンD」(アルファカルシドール、エルデカルシトールなど)はサプリの天然型より作用が強く、血液中のカルシウムが上がりすぎることがあります。同じ名前でも性質と安全域が違うため、併用は必ず医師にご相談ください。
人は千差万別です。誰かに勧められたからではなく、あなたに何が必要かを確かめてから選んでください。
まにわクリニックでは、血液検査や血管年齢チェックなどを行い、あなたのリスクを評価し、個々に応じた治療を提供しております。
気になる方はお気軽にご相談ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
参考文献
- Hasific S, Øvrehus KA, Mejldal A, et al. Vitamin K2 and D3 Supplementation in Patients With Severe Coronary Artery Calcification: The DANCODE Trial. Circulation. 2026;154(17):1656-1665. doi:10.1161/CIRCULATIONAHA.126.082363(DANCODE試験)【書誌情報 要確認】
- Manson JE, Cook NR, Lee IM, et al. Vitamin D supplements and prevention of cancer and cardiovascular disease. N Engl J Med. 2019;380(1):33-44.(VITAL試験)
- Miyamoto H, Kawakami D, Hanafusa N, et al. Determination of a serum 25-hydroxyvitamin D reference ranges in Japanese adults using fully automated liquid chromatography-tandem mass spectrometry. J Nutr. 2023;153(4):1253-1264.