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院長ブログ
2026.11.07
院長ブログ
足の静脈瘤があると、膝も悪くなる!?

みなさん、こんにちは。大阪北摂地域、箕面船場にある、まにわクリニック院長の馬庭です。
下肢静脈瘤の診察をしていると、「先生、足の血管のせいで膝まで痛くなるんですか?」というご質問を頂くことがあります。
膝の痛みで整形外科に通いながら、足のむくみやだるさで当院に来られる方は少なくありません。実はこの2つの病気の関係を調べた研究が、海外にいくつかあります。
今回は、これまでに報告されている研究を読み解きながら、この疑問にお答えします。
目次
- 足の静脈と膝は、なぜつながりうるのか
- 静脈瘤を引き起こし別の要因
- これまでの研究が示した数字
- この結果を、どう考える!?
- 私の考え
1. 足の静脈と膝は、なぜつながりうるのか

足の血液は、重力に逆らって心臓まで戻らなければなりません。その仕事を担っているのが、ふくらはぎの筋肉です。歩くたびに筋肉が縮んで静脈をしぼり、血液を上へ押し上げます。昔の井戸の手押しポンプを思い浮かべてください。静脈の中には「逆流防止弁」という一方通行の扉があり、押し上げた血液が下に落ちないよう支えています。
下肢静脈瘤は、この扉が壊れて血液が逆流し、足の静脈がふくらんだ状態です。専門的には「慢性静脈疾患」と呼ばれる病気の一つです。
では、なぜ膝に関係しうるのでしょうか。考えている説は、主に次の4つです。
- 血液の流れが滞り、膝の骨の中の圧が上がる説(台所の排水口が詰まって、流しに水がたまるイメージです)
- 静脈のうっ滞で生じる炎症が、関節に及ぶ説
- 血管も関節も「組織のやわらかさ」という体質を共有している説
- ふくらはぎの筋力や足首の柔らかさが落ち、歩き方を通して膝に負担がかかる説
どれも「ありうる話」ですが、残念ながらまだ人の体で証明されたものはまだありません。
ただ、静脈瘤を年間数百例見ていると、静脈瘤を有する方には膝を中心とした下肢の不調で悩まれている患者様が多いと感じています。
2. 静脈瘤を引き起こす別の要因

もちろん膝を含めた下肢のトラブルは静脈瘤だけが原因ではありませんし、実際に多くの要因で静脈瘤も膝関節症も発症、悪化することが報告されています。
静脈瘤と変形性膝関節症(膝の軟骨がすり減り、痛みや変形が出る病気)は、加齢、女性、肥満、立ち仕事という危険因子をほとんど共有しています。ですから、2つが同じ人に重なるのは、ある意味で当然です。調理や接客、美容、介護など、一日中立ちっぱなしのお仕事を長年続けてこられた方は、足の静脈にも膝にも負担がかかり続けています。出産の回数や、親から受け継いだ体質も、どちらの病気にも関わるとされています。
3. これまでの研究が示した数字

ここからは実際の研究結果を見ていきます。
1つ目はロシアの40〜60歳の女性を対象にした研究です(文献1)。膝の病気がある85人と、ない50人を比べたところ、静脈瘤は43%と22%で、膝の病気がある人に多く見られました。体重の影響を統計的に差し引いても、オッズ比(「どれくらい多いか」の目安)は2.7でした。100人あたりに直すと、静脈瘤のある人がおよそ20人多い計算です。
2つ目は、ベトナムの60歳以上を対象にした研究です(文献2)。静脈の病気が見つかったのは、膝の病気がある167人中123人、ない55人中32人でした。100人あたりで約15人多い計算です。年齢、性別、体重などを差し引いても、オッズ比は2.46でした。
さらに、これまでの研究結果で報告されていることは、膝の病気が多かったのは目に見えるコブ状の静脈瘤以上の段階で、細い血管が網目のように透けて見える程度(くも状血管)では関係がなかったという点です。
4. この結果を、どう考える!?

数字だけを見ると、どうやら静脈瘤と膝の病気に関連はありそうです。
もちろん、まだはっきりと言えないこともあります。
まず、静脈瘤と膝の病気のうち、どちらが先に起きたのかはわかりません。膝が痛くて歩かなくなると、ふくらはぎのポンプが働かず、静脈瘤が目立ってくる、という逆向きの流れも十分に考えられます。
しかしながら、「歩き方を通して膝に負担がかかる説」はどうでしょうか。静脈の病気が進むと、ふくらはぎの力や足首の柔らかさが落ちることは、海外の研究で確かめられています。
静脈瘤があることで歩き方、立ち方などに変化が生まれ、それが歩行における左右のバランスを障害し、膝のトラブルを起こしうるのではないかと考えられます。
ただし、はっきり落ちてくるのは、むくみや皮膚の変化が出る段階からです。今回の研究の対象者の多くは、コブが見える段階の方でした。この説が正しいかどうかは、まだ確かめられていません。
5. 私の考え

日本では、レントゲンで変形性膝関節症と判定される方が約2,500万人いると推計されています(文献3)。女性では60歳代で57%、70歳代で72%に上り、決して珍しい病気ではありません。
当院でも、静脈瘤の治療後に「膝まで軽くなった気がする」とおっしゃる方がいます。国内では、膝の病気を合併した静脈瘤の患者さん35人のうち約7割が、血管内治療の後に膝の症状の改善を感じたという報告もあります(文献4)。
ただし、検討された症例数が少ないため、もっとたくさんの患者様を集めた研究が必要であると考えます。
一方で、ふくらはぎと足首を鍛えることは、原因がどちら向きであっても、静脈にも膝にも良い方向に働くと期待できます。私自身も外来の合間にかかとの上げ下げをしています。
今日からできることをまとめます。
- 1日に数回、椅子の背につかまって、かかとの上げ下げを10〜20回
- 座りっぱなしの日は、30分に一度、立ち上がる
- 体重を少しずつ落とす(静脈にも膝にも負担が減ります)
- 夕方の足の重だるさや、夜のこむら返りが続くなら、静脈のチェックを受ける
- 膝の痛みは、整形外科での評価と治療を続ける
なかなか足の調子が上がらない方の中には、静脈瘤が隠れている場合もあります。
静脈瘤を専門に見てくれる医療機関も多くはないため、長年発見されずに経過観察され、当院で静脈瘤の治療を受けることによって症状が軽減された患者様も多く経験しています。
当院では、下肢静脈瘤の診断のための下肢静脈エコー検査(保険適用)と、日帰りの血管内治療(保険適用)を行っています。足のむくみ・だるさ・こむら返り、膝の裏の痛みが気になる方は、お気軽にご相談ください。
参考文献
- Lesnyak OM, Zubareva EV, Goncharova MG, Maksimov DM. Lower extremity venous diseases in primary knee osteoarthritis. Ter Arkh. 2017;89(5):53-59. doi:10.17116/terarkh201789553-59
- Cao TN, Nguyen CT, Nguyen MD. The association between chronic venous disease and knee osteoarthritis. Eur Rev Med Pharmacol Sci. 2023;27(7):2899-2907. doi:10.26355/eurrev_202304_31921
- Yoshimura N, et al. Prevalence of knee osteoarthritis, lumbar spondylosis, and osteoporosis in Japanese men and women. J Bone Miner Metab. 2009;27(5):620-628.(ROAD研究)
- Oga Y, et al. The Effectiveness of Endovenous Thermal Ablation for the Knee Symptoms of the Osteoarthritis with Varicose Veins. Ann Vasc Dis. 2021;14(2):108-111.