News Detail
お知らせ詳細
2023.09.27
院長ブログ
あなたの血圧年齢は何歳ですか?
血圧が高くなると、「減塩」を勧められると思います。
それは、塩分の摂取量に応じて血圧が上昇するからです。
では、血圧が高くなければ減塩はしなくても大丈夫なのでしょうか?
今回は塩分摂取量と「血圧年齢」について解説します。
1. 高血圧とは
食生活の乱れ、運動不足、慢性的なストレスなどの生活習慣の乱れや、ホルモン異常により血圧が上昇した状態を指します。診察室でのくり返しの測定で最高血圧が140mmHg以上(家庭血圧では135mmHg以上)、あるいは、最低血圧が90mmHg以上(家庭血圧では85mmHg以上)であれば、高血圧と診断されます。
2.血圧は心臓疾患・脳血管疾患と関連する!
心臓疾患は死亡原因の第2位、脳血管疾患は第4位であり、高血圧はその疾患原因の1つであることが知られています。
降圧薬の使用歴がない30歳以上の日本人男女8,952人の24年間に及ぶ追跡調査によると、血圧が高いほど循環器疾患、脳血管疾患、冠動脈疾患による死亡リスクが高くなることが報告されています。
Takashima N, et al. J Hypertens 2012
3. 日本人は1歳年を取るごとに0.6mmHGずつ血圧があがる
血圧が高いと様々な病気になりやすいことがわかったところで、次にお伝えしたいのは、年を重ねるごとの血圧の推移です。
下の図は日本人の血圧が加齢によってどのように変わっていくかを調べた研究結果です。
第5次循環器疾患基礎調査のデータより作図
このデータは降圧薬を服用していないかたのデータとなっています。
男女ともに年齢とともに血圧上昇が認められ、その上昇は加齢にほぼ比例関係(直線関係)であることが分かります。
このような研究によって、平均的な日本人は1歳年をとるごとにおよそ0.6mmHg、10年で6mmHg血圧が上がることがわかっています。
4. 塩分摂取量と血圧上昇の関係とは
次に、血圧と塩分摂取量についてみていきましょう。
下の図は52の国と地域で20歳から59歳の人 200人の1日の尿中塩分排泄量と血圧を調べたデータです。
この研究では、1日の塩分摂取量が多いほうが、年をとるごとの血圧上昇が大きいことを示しています。
1日に1g塩分摂取量が増えるごとに1年間で0.058mmHgだけ血圧が上昇することになります。
つまり、1日10gの塩分を摂取している方では、1歳年を重ねるごとに5.8mmHgずつ血圧が上昇することになります。
ここから分かることは、今高血圧をもっていなかったとしても、塩分を取りすぎる生活をしていると将来的に血圧が上昇し、高血圧症になるということです。
5. 血圧年齢という考え方
これまでに出てきた図を合わせて考えてみましょう。
例えば、今あなたが30歳で血圧が120mmHgだとします。
これからあなたが1日に塩分を7gとった場合と、14gとった場合の血圧の推移は下の図のようになります。
1日の塩分摂取量が7gの場合に65歳で到達する血圧が、1日14gの塩分摂取量の場合48歳で迎えることになります。
つまり1日塩分を14g取ることで血圧年齢は17歳も異なってしまうのです。
血圧年齢が上がれば当然血管の老化も進み、血管年齢の増加、最終的には脳卒中や心・血管病へと発展してしまいます。
将来の血圧年齢を決めるのは、今のあなたの塩分摂取量なのです。
6. 高血圧対策
血圧を上げないためには減塩が重要です。
普段の食事内容を改善することが、血圧降下作用をもたらすと考えられます。
具体的には、野菜や果物など食物繊維やカリウムが豊富な食材、飽和脂肪酸やコレステロールが少ない食材、減塩などを組み合わせたDASH(Dietary Approach to Stop Hypertension)-sodium食が推奨されています。減塩は1日6g以下が推奨されています。ちなみに厚生労働省から2019年に発表された国民健康栄養調査によると、日本人の1日食塩摂取量は10年間で減少傾向にはありますが、それでも男性10.9g、女性9.3gとなっており、まだまだ塩分過剰な状況が続いています。
「減塩すると、味が薄く美味しくない」とのご意見をよく伺います。そんな場合は、お出汁のうま味、食材の風味を活用することが有効です。カツオだしに含まれるアミノ酸には降圧効果が期待できますし、レモンやすだちの酸味、カレー粉などの香辛料、しそ・ねぎ・しょうが・ニンニクなどの薬味を使用することで素材を引き立てて美味しく味わうことができます。
発酵調味料である味噌には、抗酸化作用のある「メラノイジン」や降圧効果のある「イソフラボン」、腎食塩排泄促進因子や血管拡張因子など複数の活性因子が含まれています。塩分含有量は気になるところですが、お味噌汁1杯分に含まれる食塩は1g程度であり、上手に使うことで血圧降下作用が得られると考えられます。
醤油にも血圧を下げる効果が期待できるアミノ酸が含まれています。
減塩を意識しながら、伝統的な日本食を普段の食生活に取り入れることで、理想的な食事内容になるのではないでしょうか。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。血圧のことが心配、実際に血圧が高いけど治療していないなどあれば一度ご相談ください。