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院長ブログ
2026.09.14
院長ブログ
「座りっぱなし」が多い方に伝えたい!少しの動きが予防につながる!

みなさん、こんにちは。大阪北摂地域、箕面船場にある、まにわクリニック院長の馬庭です。
「先生、ジムには週2回ちゃんと通っているんです。それなのに中性脂肪も血糖も、なかなか下がらなくて」
外来でこうお話しされる方が、本当によくいらっしゃいます。
そこで一日の過ごし方を伺うと、「昼ごはんのあと、夕方まで席を立たない日もあります」と返ってくる。
この「座っている時間」こそ、運動習慣とは別のもうひとつの改善すべき点ではないか、そう考えさせられる研究が、今年ヨーロッパ予防循環器病学会誌に報告されました。
今回はその内容と、どうすべきかを内科・循環器専門医の立場から解説します
結論を先にお伝えします。座っている時間を短い活動でこまめに中断すると、その日のうちに血糖・中性脂肪・血圧・血管の反応が良い方向に動きます。
目次
1. なぜ「座り続ける」がいけないのか
2. 「運動しているから大丈夫」は本当か
3. 今回の研究が示した数字 ― 144研究のメタ解析
4. 私の考え
1.なぜ「座り続ける」がいけないのか

太ももやお尻の筋肉は、食事でとった糖のいちばん大きな「置き場所」です。筋肉が収縮すると、糖を取り込む入り口(GLUT4という運び屋)が細胞の表面に出てきます。
これによって、インスリンと呼ばれる、血糖値を下げるホルモンが働くことなく、糖が筋肉内に取り込まれ、血糖値の急激な上昇を防ぐことができます。
ところが座ったままだと、この入り口はほとんど開きません。行き場をなくした糖が血液中にとどまります。
これが食後血糖の上がりやすさ(血糖値スパイク)につながります。
脂肪のほうは、もう少し込み入っています。食事でとった脂肪は、中性脂肪を積んだ「配送トラック」のような粒子になって血液中を流れます。その荷物を降ろす係が、毛細血管の内側の壁に張りついたリポ蛋白リパーゼ(LPL)という酵素です。筋肉が動いているあいだは荷下ろしがよく進み、中性脂肪は筋肉に運び込まれて燃やされます。ところが座り続けて筋肉が動かないと、LPLの働きが落ち、荷下ろしが滞ります。
問題はその先です。降ろしきれなかったトラックは血液中を長くさまようあいだに中身を削られ、レムナント(積み荷を半分降ろした小型の粒子)に変わります。小さくなったぶん血管の壁のすき間を通り抜けやすく、内側に溜まっていく。中性脂肪の数値そのものが血管を傷つけるというより、行き場を失った粒子が血管の壁に居座ることが問題で、ここが動脈硬化の出発点です。
血管も同じです。ホースの水をずっと細く弱く流していると内側にヌメリが付きますが、ときどき勢いよく流せば洗い流されますよね。血管でも、血流が勢いを取り戻すと一酸化窒素(NO)が出て、血管がしなやかに広がります。
一方座り続けると、この「勢いよく流す時間」が十分に行われず、NOの産生が滞ります。これによって血管が硬くなり動脈硬化の原因になります。
当院でも血管の硬さを測定しているのですが、運動習慣を取り戻すことで、硬かった血管が柔らかくなる症例を経験しています。
2.「運動しているから大丈夫」は本当か

一週間は168時間あります。週2回・1時間ずつジムに通っても、それは168時間のうちの2時間。残りの時間をどう過ごすかは、別の話として残ります。
日本人のデータでも同じ方向が見えています。全国の大規模コホートである J-MICC研究で、成人62,754名を調べた横断研究では、余暇の運動量とは独立して、座位時間が長い人ほど血圧・中性脂肪・non-HDLコレステロールが高く、HDLコレステロールが低い傾向が見られました。
ただし慎重に読む必要があります。これは観察研究ですから、「もともと体調が優れない方、体重が重い方が、結果として長く座っている」という可能性もありますので、解釈には注意が必要です。これに答えるには、実際に介入してみる研究が必要です。
3.今回の研究が示した数字 ― 144研究のメタ解析

今回の研究は、ベルギー・ハッセルト大学から発表されたもので、2025年2月までのランダム化比較試験を集め、144研究・247の介入群・合計2,216名(18〜65歳)を統合しました。座りっぱなしの人に対して、そこに短い活動をはさむ条件を比べ、活動の「頻度・長さ・強さ」のどれが何に効くのかを解析しています。
- 血糖:こまめに(頻回に)中断するほど下がる。
- 中性脂肪:長め・強めの活動ほど下がる。
- 血圧:活動の様式によらず速やかに血圧が低下する。「動けば下がる」
- 血管内皮機能(FMD、血管がしなやかに広がる力):改善には中〜高強度が必要で、軽い活動では動脈硬化・血管内皮機能の改善は期待しにくい可能性がある。
4.私の考え ― 今日からできること

日本人成人を代表する全国標本5,346名の調査では、座位時間は平均 5.3時間/日、1日8時間以上の方が25.3%でした。デスクワーク中心の方では、さらに長くなります。
当院でも、健診で中性脂肪や血糖を指摘されて来られる方に伺うと、「昼食のあと、夕方まで一度も席を立っていない」という方が珍しくありません。かくいう私自身、外来が立て込むと電子カルテの前に2〜3時間座り続けてしまいます。最近は診察の合間に立ち上がって肩を回す、昼休みは一度外に出る、を意識しています。忘れる日もありますが、「思い出したら立つ」を続けています。
今日から試せることを、優先順位をつけて挙げます。
1. 30分ごとに2〜3分立つ。血糖が気になる方は、長さより回数を優先してください
2. 食後こそ動く。昼食後の10分の散歩は、一日で最も効率のよい10分です
3. 中性脂肪が気になる方は「少し長め・少し息が弾む程度」を一日1回。早歩き10分、階段を2階分など
4. 立つだけでなく足を動かす。その場足踏み、かかと上げでも筋肉のスイッチは入ります
5. タイマーやスマートウォッチの通知を使う。意志ではなく仕組みで解決する
6. まず測る。空腹時血糖・HbA1c・中性脂肪・LDL/HDLコレステロール。可能なら食後の値も
人は千差万別です。同じ「座り仕事」でも、血糖が気になる方と中性脂肪が気になる方とでは、優先すべき動き方が違います。誰かに勧められたやり方をそのまま真似るのではなく、あなたの体でいま何が起きているのかを知ること。そこからしか、あなたに必要な一歩は決まりません。
まにわクリニックでは、血液検査の値が高ければ一律に薬を処方するのではなく、その方の置かれているリスクに応じて、食事や運動指導、薬物療法を行っています。
検査も血液検査だけではなく、血管の硬さや脂の溜まり具合、心臓のパフォーマンスなどを評価し、患者様にあった治療を提案、提供しております。
気になる方はお気軽にご相談ください。
参考文献
- Vanherle J, Franssen GHLM, Ivanova A, Eijnde BO, Franssen WMA. Optimizing physical activity bouts to interrupt sedentary behaviour for cardiometabolic health: a systematic review and meta-analyses of randomized controlled trials. Eur J Prev Cardiol. 2026;33(12):2200-2216. doi:10.1093/eurjpc/zwag079
- Koyama T, Kuriyama N, Ozaki E, et al. Sedentary Time is Associated with Cardiometabolic Diseases in A Large Japanese Population: A Cross-Sectional Study. J Atheroscler Thromb. 2020;27(10):1097-1107.(J-MICC Study)
- Kitayama A, Koohsari MJ, Ishii K, Shibata A, Oka K. Sedentary time in a nationally representative sample of adults in Japan: Prevalence and sociodemographic correlates. Prev Med Rep. 2021;23:101439.
- Seino S, Abe T, Nofuji Y, et al. Dose-response Associations of Physical Activity and Sitting Time With All-cause Mortality in Older Japanese Adults. J Epidemiol. 2024;34(1):23-30.
- Leppe-Zamora J, Ramos-Fuster S, Muñoz-Monari B, Roa-Alcaino S, Sarmiento OL. The effect of computer prompt in breaks of sedentary behaviour among office workers: a systematic review and meta-analysis. Int J Behav Nutr Phys Act. 2025;22(1):75.
まにわクリニックのご案内
▶ まずは「測る」ことから(保険診療)
血糖・HbA1c・中性脂肪・LDL/HDLコレステロールなどの血液検査は、生活習慣病の診療として保険適用で行えます。動脈硬化の状態を調べる心電図・頸動脈エコー・血圧脈波検査も、必要と判断した場合は保険診療の範囲で実施しています。健診で「要再検査」と言われた紙をお持ちいただければ、そこから始められます。
▶ 食事や体重を含めて相談したい方へ(自費診療)
栄養療法外来・サプリメント外来は自費診療となります。検査結果を踏まえたうえで、食事内容や不足している栄養素についてご相談いただけます。保険診療のみをご希望の方には、もちろんそちらだけでも対応いたします。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。